目次
インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる感染症です。
一般的なかぜに比べて、高熱、頭痛、だるさ、筋肉痛などの全身症状が強く現れやすいことが特徴です。咳や鼻水、のどの痛みを伴うことも多くあります。
主に咳やくしゃみなどのしぶきや、ウイルスが付着した手を介して感染が広がります。冬に流行することが多いですが、冬以外にも感染することがあります。
症状について
主な症状は以下のとおりです。
- 発熱
- 頭痛、強いだるさ
- 筋肉痛、関節痛
- 咳、鼻水、のどの痛み
- 食欲低下
- 嘔吐、下痢、腹痛
38℃以上の高熱になることが多いものの、微熱にとどまる場合もあります。
中耳炎、肺炎、熱性けいれんなどを合併することがあります。まれに脳炎・脳症などの重い合併症を起こすこともあるため、熱の高さだけでなく、呼吸や意識、水分がとれているかなどを確認することが大切です。
診断について
症状、診察所見、周囲の流行状況などから判断し、必要に応じて検査を行います。
一般的な迅速抗原検査は、発症して間もない時期にはウイルス量が少なく、インフルエンザであっても陰性になることがあります。そのため、検査結果だけではなく、症状や経過を合わせて診断します。
当院では、迅速抗原検査に加えて、ID NOWによるインフルエンザの核酸増幅検査を使用しています。一般的な抗原検査では検出しにくい発症早期の診断に役立ちます。
※ID NOWは、正確にはPCR法とは異なる「等温核酸増幅法」を用いた検査です。
当院では、発症から12時間以内の5歳未満のお子さんを対象に(5歳以上でも、基礎疾患がある方は適応になる場合もあります)、保険適用の条件と検査の必要性を確認して実施します。検査方法は、年齢、発症からの時間、症状などに応じて医師が判断します。
どの検査でも、感染を完全に否定できるわけではありません。陰性でも症状が続く場合や、状態が悪化する場合には再度ご相談ください。
また、ご兄弟がインフルエンザと診断されている場合や、通っている園・学校でインフルエンザによる学級閉鎖が行われている場合など、周囲の流行状況と症状、診察所見からインフルエンザが強く疑われることがあります。
その場合は、ご家族と相談のうえ、検査を行わずにインフルエンザと診断し、治療を開始することがあります。
治療について
十分な休養と水分補給に加え、年齢や症状、発症からの時間などを踏まえて、抗インフルエンザ薬を使用します。
抗インフルエンザ薬について
当院では、日本小児科学会の「インフルエンザ治療・予防指針」に準拠し、お子さんの状態に合わせて治療を行います。
抗インフルエンザ薬には、飲み薬、吸入薬、点滴薬があります。年齢、重症化のリスク、発症からの時間、薬を飲めるか・確実に吸入できるかなどを考慮して選択します。
発症から48時間以内に使用を開始すると効果が期待しやすく、発熱などの症状が続く期間を短くする効果があります。特に乳幼児や基礎疾患のあるお子さん、症状が重い場合には、早期の治療が重要です。
また、重症例などでは、発症から48時間を過ぎていても治療を行うこともあります。
抗菌薬について
インフルエンザウイルスに抗菌薬は効きません。
ただし、細菌による中耳炎や肺炎などを合併した場合には、抗菌薬が必要になることがあります。合併症の有無を診察で確認し、必要な場合に使用します。
注意したい経過・合併症
二峰性発熱
インフルエンザでは、一度熱が下がった後に再び発熱することがあり、これを「二峰性発熱(にほうせいはつねつ)」といいます。解熱剤で一時的に熱が下がり、効果が切れて再び上がる場合とは区別します。
インフルエンザ自体の経過として起こることもあり、再び熱が出たからといって、必ず細菌感染や薬の効き目の問題とは限りません。
ただし、中耳炎や肺炎などを合併していないか確認することが大切です。特に、咳が強くなる、呼吸が苦しそう、耳を痛がる、元気がなくなるなどの症状を伴う場合には、再度受診してください。
インフルエンザ脳炎(脳症)
小児のインフルエンザで、特に注意が必要な重い合併症がインフルエンザ脳炎・脳症です。発症早期から起こることがあり、命に関わったり、後遺症が残ったりする場合があります。
次のような症状がみられる場合には、夜間や休日でも速やかな受診が必要です。
- 呼びかけへの反応が悪い、視線が合わない
- 起こしても意識がはっきりしない
- けいれんが長く続く、繰り返す
- 意味の分からない言動が続き、普段の状態に戻らない
高熱の際には、一時的に寝ぼけたような言動をする「熱せん妄」がみられることもあります。ただし、家庭で脳症と見分けることは難しいため、意識や反応がおかしい場合には様子を見続けないでください。
意識が戻らない、けいれんが続く、呼吸がおかしい場合には119番で救急車を呼んでください。
インフルエンザ筋炎(筋症)
熱が下がる頃に、突然ふくらはぎを強く痛がり、歩きにくくなることがあります。これは「インフルエンザ筋炎」と呼ばれ、時々学童期のお子さんでみられます。
- 両方のふくらはぎを痛がる
- 歩くことや立つことを嫌がる
といった症状が特徴です。
歩けないほど痛がる場合は受診してください。特に、尿が赤褐色・コーラ色になる、尿の量が減る、強い脱力がある場合は、速やかに受診してください。
また、まれに筋肉の障害が強くなり、腎機能が低下することのある「横紋筋融解症」を起こすことがあります。
必要に応じて血液検査や尿検査を行います。
よくある質問
熱は何日くらい続きますか?
発熱は数日、目安として3~5日程度で下がることが多いですが、個人差があります。抗インフルエンザ薬を使用しても、すぐに熱が下がらないことが多いです。
発熱が5日程度続く場合や、一度下がった熱が再び上がった場合にはご相談ください。
ただし、呼吸が苦しそう、水分がとれない、意識や反応がおかしい場合には、日数にかかわらず早めの受診が必要です。
発熱してすぐ受診してもよいですか?
受診して頂いて構いません。
抗原検査では発症早期に陰性になることがありますが、診察ではインフルエンザ以外の病気や、脱水・呼吸状態なども確認します。当院では、条件を満たすお子さんにはID NOWによる検査も行っています。
特に乳幼児や基礎疾患のあるお子さん、症状が強い場合には早めにご相談ください。
一度かかっても、同じシーズンにまたかかりますか?
はい、かかることがあります。
A型には主にA(H1N1)型とA(H3N2)型があり、これらとは別にB型があります。
そのため、同じシーズンに異なるA型に2回、さらにB型に1回かかることもあり得ます。
けいれんを起こしたらどうすればよいですか?
安全な場所に寝かせ、顔や体を横に向けてください。口の中に指や物を入れたり、体を強く押さえつけたりしないでください。
けいれんが始まった時刻を確認し、呼吸や顔色、体の左右で動きに違いがあるかを観察します
可能であれば動画撮影をしていただけるといいかと思います。5分以上続く、繰り返して意識が戻らない、呼吸や顔色が悪い場合には救急車を呼んでください。
初めてのけいれんは、短時間で止まって普段の反応に戻った場合でも、速やかに医療機関を受診してください。判断に迷う場合や、安全に連れて行けない場合には救急車を呼んで構いません。
解熱剤を使ってもよいですか?
つらくて眠れない、痛みが強い、水分がとりにくい場合には使用して構いません。小児では一般的にアセトアミノフェンを使用します。
解熱剤は、体温を必ず平熱に戻すためではなく、つらさを和らげるための薬です。熱が高くても、水分がとれて眠れていれば、必ずしも使用する必要はありません。
処方された用量と使用間隔を守ってください。大人用の薬や市販のかぜ薬には、小児のインフルエンザに適さない成分が含まれることがあるため、自己判断で使用しないでください。
お風呂に入ってもよいですか?
元気があり、水分がとれていれば、短時間のシャワーなどで体を清潔にして構いません。
寒気が強い、ぐったりしている、水分が十分にとれていない場合には、無理に入浴せず、体を拭く程度にしましょう。熱いお湯や長湯は避け、入浴前後の水分補給を心がけてください。
家庭では何に気をつければよいですか?
まずは休養と水分補給を心がけてください。一度にたくさん飲めない場合には、少量ずつこまめに与えましょう。食事は無理に食べさせず、食べられるものから再開してください。
また、インフルエンザでは、薬を使用しているかどうかにかかわらず、急に走り出す、外へ飛び出そうとするなどの異常行動が起こることがあります。
少なくとも発熱から2日間はお子さんを一人にせず、玄関や窓を施錠するなど、転落や飛び出しを防ぐ対策を行ってください。それ以降も、普段と違う様子がある場合には注意が必要です。
家族に予防薬を処方できますか?
抗インフルエンザ薬を予防目的で使用することはありますが、健康な同居家族全員に一律で勧めるものではありません。
インフルエンザ患者との接触があり、重症化リスクが高い方などでは、予防投与を検討することがあります。受験などの事情がある場合も、接触状況、年齢、基礎疾患、薬の適応などを確認し、個別に判断します。
予防投与でも感染を完全に防げるわけではありません。
ご希望の場合はご相談ください。予防投与は原則として自費診療です。
すでに発熱などの症状がある場合には、予防ではなく診断・治療の対象になります。
園や学校にはいつから行けますか?
登園・登校には、原則として次の二つの条件を両方満たすことが必要です。
| 対象 | 発症後の日数 | 解熱後の日数 |
| 乳幼児(登園) | 発症した後5日を経過 | 解熱後3日を経過 |
| 小学生以上 | 発症した後5日を経過 | 解熱後2日を経過 |
発症した日と解熱した日は、それぞれ当日を「0日目」として、翌日からを「1日目」として数えます。
発症日は検査で陽性になった日ではなく、原則として発熱などの症状が始まった日です。
例えば、月曜日に発症→木曜日に解熱した場合、小学生以上は最短で日曜日から、乳幼児は月曜日から登校・登園可能となります。
解熱剤で一時的に熱が下がっている状態は、ここでいう解熱には含めません。再び発熱した場合には、最後に解熱した日から改めて数えます。
日数の条件を満たしていても、体調が回復していなければ無理をせず休みましょう。必要な書類については、園や学校にご確認ください。
予防接種について
インフルエンザワクチンは、発症や重症化のリスクを下げる効果が期待できます。
当院では注射のワクチンに加え、対象年齢や健康状態に応じて、鼻に噴霧する「フルミスト」も実施しています。
一度インフルエンザにかかっても、別の型のインフルエンザウイルスに感染することがあるため、「一度かかったから、今シーズンはワクチンが不要」というわけではありません。
感染後も予防接種の意義がありますので、体調が回復してから、接種の時期や回数についてご相談ください。







